ロシアピアニズムとは(2)~語る音~

ロシアピアニズム(1)では、ロシアの辿った歴史について軽く触れました。

では、ロシアンメソッドでは、響きの豊かさを重視し、美しさに徹底的に求め、磨き上げる1音に一体何を求めてきたのでしょうか。

-ロシア人にとって「鐘の音」は特別なものだ。多くの作曲家が作品の中で鐘の音を使っている。人々は鐘の音色によって、喜ばしい日なのか、危険が迫っているのか、知ることが出来た。優れた鐘つきは男一人で百種類以上の鐘の音をつき分けることが出来たのだ。-
ロシア・ピアニズムの贈り物(みすず書房 著・原田英世)

これは著書の中にある、原田英世氏の氏でもあり、全ソ連演奏家コンクールでリヒテルと一位を分け合った名匠、ヴィクトル・メルジャーノフ(1819-1912)の言葉です。

「鐘の音色」から、人々はその知らせんとするものを詳らかに感じとっていたというのです。

このメルジャーノフの言葉を読んだときに、私はロシアピアニズムの秘密に触れたような気がしました。

「猫が踏んでも音は鳴る。」

この言葉に傷ついたり憤ったピアニストは多いことと思いますが、ピアノの打鍵はシンプルでこそあれ、決して簡単ではないのです。

その音がたとえ和音でなく、たった1音であったとしても、その1音は、如何様にも変幻可能な1音で、
例え同じ楽器であろうと、千人が弾けば、千通りの音が出るような大きな可能性を秘めた1音なのです。

先にあげたメルジャーノフの言葉は、まさにロシアの人々がピアノの音に対しても、敏感であったことを物語っています。

「鐘の音」も「ピアノの音」も、打音と長く響く音を持つという上での共通しているのです。

ヨーロッパにおける鐘が主に信号の役割として「象徴」として存在していたのに対し、ロシアの鐘は、教会での礼拝に人々を迎え入れ、あるときは葬送の行進に、そして洗礼にも立ち会ったのだといいます。

そうした数々の鐘の音色に、人々は神が語る声を、またある時は祈りを、そして自らの生命の音を聴いていたのでしょう。

打たれることで突如として発音される音、そしてその後に続く深い響きに、人は心に静寂にし、耳を研ぎ澄ませるのです。

ラフマニノフ: 音の絵 作品33-3
ピアノ:セルゲイ・ラフマニノフ

こうした事実はきっと、ロシアピアニズム、そしてロシアンメソッドにおける「打鍵」を理解する大きな助けとなることと思います。

ロシアピアニズムにおいて1音が探求され続ること、そして「響く音」がその大きな特徴であること、それは「鐘」とは切っても切れない関係があるのでしょう。

ロシアンメソッド・アウェアネスメソッド
松岡音楽教室
松岡優明(ゆうま)

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