ピアノの打楽器的性質(3)~音の減衰に立ち向かう~

ピアノの無情な「音の減衰」は、

私たちの心とは裏腹に、物理の法則上どうしても避けることが出来ないものであるとお話しました。

発音したその音を、次の音に向かってクレッシェンドすることは、

肩をすぼめても、顔をくしゃくしゃにしても、体を開いても、手を高く上に上げても、叶わないことであると。

では、そんな音の減衰の中でどうして豊かな「歌」を奏でることができるのでしょうか。

この不可能なピアノにおける1音でのクレッシェンドを、簡単に試すことのできる方法があります。

クレッシェンドする前の音に、

その後に続く音とほぼ同等の響きを纏わせることです。

そしてそのまま虫様筋を使い、手の中に響きを持ったまま、次の音を演奏するのです。

クレッシェンドする音がその次よりも小さくなければならないという意識は決してしないでください。

ただ、アタックを伴って強く弾いたりしなければそれで十分なのです。

これは長い音価を持つ音の弾き方にも同じことがいえるでしょう。

アタックによって強く弾く、というのは非常に容易なテクニックの一つですが、

そういった打鍵は(1)(2)でお話したように、

音の減衰を早めてしまいます。

クレッシェンドは愚か、次の音まで響きを纏い続けることはますます難しくなっていくのです。

小さな部屋で練習していると、ついつい「打点」や「基音」といった発音の瞬間の強弱に着目をしてしまいがちになります。

しかし、大きなホールに響き渡るのは、

発音の瞬間の音ではなく、

その後に続く「響き」です。

そこに着目することで、

ピアノの演奏方法は大きく変わっていくことになるでしょう。

松岡音楽教室

松岡優明

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