#4 ショパンエチュード研究 シリーズ第二回 作品10-1 (2)
(1)でお話ししたように、上昇型は1から2へ向かって手首を上げ、下降型では5から4ないしは3に向かって同じように手首を上げる動きに伴い、指が自動的に下降することで打鍵をします。
それを補助するのがこのような↓
虫様筋による指の根元を前に出すような運動です。
この基本的な動作は終始変わることはほとんどありませんが、黒鍵と白鍵、また音域などの組み合わさり方で困難な箇所が幾つかあります。まず初めから見ていくと、3~5小節)
3、5小節の上昇型は、1と2で6度の音程をまたがなければなりません。
この1と2による6度音程は、
この楽曲内で幾つか出てきますが、
同様の1と2によるこれより広い音程は23小節目の7度のみです。
基本の動きはそのままに、
このように↓
さらに手をかなり斜めに構え、指が鍵盤を上に向かって昇るようにするとよいでしょう。
23小節目の7度音程も同様です。
このように手を斜めにすることで、鍵盤に向かって斜めに構えることで同じ開き方でも多少広い音程を取ることが出来ます。
8小節)
ここではハーモニーが小節内で変化し、小指のDisはメロディーのように歌います。
このアクセントは強調ではなく、歌う、あるいはespressivoと考えるのが良いでしょう。
この箇所では努めて手を斜めに傾けるようにすることで、以下に参照の通り、鍵盤と5の指の接着面積は増えます。
これにより、手首の動きをさらに積極的に使えるようになるでしょう。
また、Disを弾く前に手を完全に上に取り上げ、旋回の動きにプラスして再度手首で打鍵するようにすると、アクセントでも音が潰れることはありません。
さて、おそらくこの楽曲の中で最もポジションの難しいパッセージが連続して出てくる、
まさに鬼のような8小節間を細かくみていきましょう。
問題の箇所はこちらです。
29~36小節)
30、32小節)
5-4-2もしくは5-3-2で黒鍵によるオクターブポジションを含む広い音程の下降型です。
ショパンは30小節の方には5-4-2あるいは5-3-2の指使いを指定しています。
私は両方に5-3-2を使いますが、
これはそれぞれの手の大きさや指の長さによってそれぞれが判断すればよいでしょう。
この黒鍵のポジションでは、
隣合う指が広く跳躍する箇所の前に、手首を上げきってしまわないことが重要です。
両方に3を使う場合は、3-2で5度を弾かなければなりませんので、5から3へ向かってではなく、3から2へ進行するときに手首の上昇を使います。(4を使う場合は5から4に向かって手首を上げることになります。)
このように、跳躍が必要な時には手首の上下は大きくなりますので、2に向かって大きく上げるように使うことで打鍵し易くなります。
もう一つ、手首を特に上げなければならないのは、黒鍵から白鍵への進行のときです。
32小節)
ここでは手首を縫うように上下させるのですが、これを滑らか且つ急速に使う必要があります。
2は黒鍵なので、その次の白鍵に向かって手首を大きく上げるようにするとかなり弾きやすくなります。
1) 基本的に1から2、3、4への上昇は手首の上昇を伴う。
2) 5から4、3、2への下降も1)と同様に手首の上昇を伴う。
2) 黒鍵から白鍵への進行は、大きく急激な手首の上昇を伴う。
この手首の動きの法則を使えばこの楽曲の困難の大部分は、正しい練習と共に解決されていくことと思います。
33小節)
この箇所は5-1が白鍵→黒鍵の進行をするために、手の動きが忙しくなりがちで、1の指が強く深く打鍵されすぎてしまう傾向にあります。
ここでも、手を斜めに構えること、2の白鍵に向かって手首を上げることでかなり弾きやすくなります。
この手首の動きの経過として1の指を通過するようにするとよいでしょう。極めて小さな旋回のみで程よい音量を獲得できます。
(3)へ続きます。
松岡音楽教室
松岡優明