ピアノの打楽器的性格(1)
ピアノは打楽器やグランドピアノの仕組みでお話したように、ピアノは打楽器です。
88もの音程を持ち、音色に無限の可能性を持つピアノ。
ピアノが豊かに歌うのを耳にすれば、
この楽器は、その打楽器的性質を微塵も感じさせることはありません。
では、打楽器的性質とは何でしょう?
打つ?叩く?
打楽器的性質を特徴づける音として、
まず、発生する音は、常に「打音」と共にあることが上げられると思います。
打楽器においては、
発音振動をもたらす為に打たれた際の「打音」と共に、突如として音が鳴り始めるのです。
また、
多くの打楽器は多くの音程を持ちません、このことも「発音の際に必ず打音を伴う」ことと併せて、
歌としての役割を担う「旋律」の担当にはあまり向いていない要因でしょう。
発音された音は常に減衰していくことも、情感を湛える旋律を奏でる上では不利であると言えるかもしれませんね。
ピアノの発音メカニズムは紛れもなく打楽器それと相応しています。
しかし、金属の使用による弦の圧倒的な張力の強さ、そして梃子の原理で打鍵の約6倍のスピードで放たれるハンマー、
こういったピアノならではのメカニズムから、
極打楽器的性質を裏付けるものの一つである「打音」は極力排除されています。
しかし、鍵盤上で発生する「下部雑音」
は依然として明らかな「打音」であり、この音は非常に大きな音なのです。
この「下部雑音」がどれほど大きなものであるかを確かめてみるとお分かり頂けると思います。
まずペダルを踏み、鍵盤を音が鳴らないように静かに押さえたら、
その鍵盤を反対の手で強く突いて見て下さい。
どうでしょうか?
大きな「打音」に共鳴するように、全ての弦がワーンと響いていませんか?
実はこの「下部雑音」の扱い方に、
ピアノ演奏における非常に重要なテクニックが隠されています。
ピアノの打楽器的性格(2)~下部雑音~に続きます。
松岡優明
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