#3 ショパンエチュード研究 シリーズ第二回 作品10-1 (1)

このシリーズの目的は
決してただ楽にショパンのエチュードを弾くことではありません。

音楽に魔法はあっても、
それを楽に修得するような魔法のメソッドはありません。

正しく合理的なアプローチによる地道な努力の先でこそ、魔法にかかったような美しい音楽は紡ぎ出されるのだと思います。

正しいアプローチを学ぶことで、

目的への道のりは私たちの前に確実な存在としてその姿を示してくれます。

そして目的へと向かう日々の練習や努力が、私たちにとってきっと楽しく有意義な時間をもたらしてくれるものだと信じています。

さて、シリーズの第2回である今回は、作品10の第1頁に悠然と立ちはだかる

第1番を取り上げたいと思います。

まず、このエチュードは大きな手を持った人の為だけのものでもなければ、

手を拡張するような目的を持ったものでもないと考えます。

結果的に手が良く広がるような柔軟性を獲得することが目的であると考えますが、これは拡張とは少し違うように感じます。

というのも、手を目一杯に開きっぱなしにしながら演奏するのではなくのでは決してなく、

各々の手が楽に開く範囲で演奏するのが好ましいためです。

楽に開いているかそうでないかの基準の一つは、手を開くときに前腕を使いすぎてしまうために肘が力んでしまうか否かです。

以下のように肘を外側に出すと、

前腕の負荷は軽減したように感じるのですが、実際は軽減することはありません。

それどころか肘を出し脇を開くと、

今度は少なからず肩にも付加を掛けてしまうことになります。

これでは良い響きを獲得することはできません。

エネルギーは背中から指先まで、

無駄な力みによってせき止められることが一切ないようにしなければなりません。

余談ですが、肩こりに悩むピアニストは、
その原因の一つとして、脇を大きく開き肘を曲げながら演奏していることが上げられるように思います。

ピアノ演奏のみならず、デスクワークや日常生活においても、肘を曲げる姿勢というのは、肩に若干の緊張状態を強いるものです。
この若干の緊張が継続することで、確実に肩の凝りを引き起こすことになるのです。

さて、
脇を開くことなく、手を無理に開かずにこのエチュードの広いアルペジオを約2分間にも渡り演奏し続けるために重要なのは、
柔軟な手首の動きです。

手首を左右上下に自在に動かしながら使うことで、

肘はこのように

地面を向くような理想的で自然なポジションをとり続けることができます。

このポジションは、このエチュードのみならず、
ピアノ演奏における基本的かつ理想的なポジショニングであると考えます。

このポジショニングを頻繁に崩しながら、
速いテンポで演奏を行えば、
徐々に前腕に痛みが出てきます。

この痛みを感じながら練習を続けても、痛みに慣れることはあっても正しい奏法を体得することには繋がりません。

この手の持久力をつけることは絶対にお勧めできませんし、下手をすれば腱鞘炎をも患いかねません。

また、このエチュードは難しさの要因は音域の広さのみではありません。
Cdurであることもその大きな要因です。
Cdurの楽曲は勿論白鍵を演奏することが多く、手を鍵盤と水平に構えようとしてしまいがちになります。

ショパンの推奨した、

以下のような手を少し外側に倒したポジショニングが無理のない演奏のための鍵を握ることになってきます。

ショパンの指定するテンポというのは実に絶妙です。

この一連のエチュードにおいて指定のテンポでの演奏を達成するためには、誰もが体の使い方について否応なしに考えさせられるでしょう。

無理のない=痛みや緊張のない

状態で指定のテンポを達成することこそが、
理想的な体の使い方を体得するための最短ルートです。

では、冒頭のパッセージでこのエチュードの基本的な動きについて考えていきましょう。

このように、指の高さに合わせ腕の上下運動をふんだんに使いながら、
虫様筋による指の支えと指の動きを利用ていきます。

肘を常に下に向け、楽な状態をキープする目的は「良い音質」が常に獲得されることです。

この肘のポジションをキープするためには、
音が上に行けばいくほど、
↓のように

手を外側に傾ける必要があります。

そして、このように演奏した1234指を5に向かい次々に畳んでいくようにし、
再び1を使うときには畳んだ指を動かさずに手首を旋回するようにして打鍵します。

1から次の2の指に向かい手首を上昇させるように意識することでこのエチュードは格段に弾きやすくなります。

虫様筋を使い指を掌側へと倒す動きに手首の上下運動が加わることで、指の稼働域は指を酷使することなく各段に広がります。

そして、手首は5に向かい着地するような弧を描きます。

(2)に続きます。

松岡音楽教室

松岡優明

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