#7 ショパンエチュード研究 シリーズ第三回 作品10-3 (2)

ピアノの音は、気合いを入れようが、念じようが物理的には、いつも「減衰」の一途を辿ります。

ピアノの音をコントロールは、

ハンマーが弦を打つその一瞬

のために、如何にして打鍵の動作を行うかにかかっています。

発音の後に

手を宙に舞わせようが、

あるいは天を仰ごうが、

その後に音がひとりでに伸びていくことは有り得ません。

ではこのエチュードを実際にどのような、テクニックを使って演奏していけばよいのでしょう?

早速楽譜を見ていきましょう。

楽曲はショパンエチュードでは定型ともいえる、A-B-Aの3部形式からなっています。

冒頭の楽譜ですが、

まずはA部における右手の基本的な使い方を考察していきましょう。

まず二段譜のうちの青い四角で囲った部分、

これが右手で演奏される部分になるわけですが、

右手のみで実に三声部を奏でるわけです。

この三声のそれぞれは然るべき役割を担うことになるのですが、

その役割を単なる「強弱」としてではなく、

遠近感

として、上下左右そして前後に、

立体的に配置する

イメージをもつと良いでしょう。

この音に遠近感を持つという概念は

まず手を鍵盤と水平 

に構えたのでは、なかなか生まれてきづらいでしょう。

ここでもショパンの、

両手を小指側に少し倒したポジショニング

が肝心になってきます。

この構えにより、一番変わってくる部分は

肘の状態

です。

「前に習え」の姿勢のように

手のひらを内側に向けているときには、肘が楽であるのに対し、

手の甲を合わせるようにして手の平を外側へ向けると

肘が硬直するのを感じられるでしょう。

この体の自然な状態を鍵盤上でも取り入れているべきである、というのが基本的な考え方です。

(これは、ショパンの楽曲のみでなく、ショパンに影響をうけた多くの作曲家、リャードフ、スクリャービンなどの楽曲にもまさにこのポジションが前提となって書かれているような運指が多く見受けられます。)

まずメロディーラインの弾き方です。

楽譜には「レガート」と書かれています。

ショパンはこのレガートのための練習を

まず、スタッカートから始めさせたといわれています。

そして徐々に音価を長くしていくのです。

このことから、レガートにショパンが求めていたテクニックが

正しいポジション、正しい打鍵によって得られる「良い発音」が軸にあったことは明白でしょう。

レガートを勉強するときに、

真っ先に、指で音と音を繋ごうとしたのでは、

鍵盤を押しっぱなしにする間に

手、あるいは体が硬直してしまうのをどうしても避けることは出来ません。

そのためにも、まず「鍵盤が底に付くまで」を徹底的に正しく行うことから、レガートの練習を初めていく訳です。

1音の美しさを磨き、それをキチンと聞き取れるよくになるところから始めるのです。

1音の基本的な奏法は、

こちらの記事をご参照ください。

このようにペダルを踏みながら、正しい打鍵を意識して行うと良いでしょう。

虫様筋で指を支える、あるいは倒すように使いながら手首の動きで打鍵します。

そして打鍵は、基本的にはいつも上から下に向けて行うことを忘れないようにしましょう。

このスタッカートの動きで良い発音が得られるようになってきたら、

指先ではなく、手首で音と音を繋ぐように意識して徐々に音価を長くしていきます。

音価を長くするためには、

伸ばしている音の響きを虫様筋で常に手の中に保っているようなイメージをしてください。

この筋肉を養うのには、

ロシアンメソッド基本のタッチ(1)手の使い方のヒント~

ロシアンメソッド基本のタッチ(2)~虫様筋体操~

でオススメしている虫様筋体操が非常に効果的です。

次に右手で奏する内声をどのように弾けばよいのかについて考察していきましょう。

これには、柔軟な手首の動きが不可欠です。

このように手首を右斜め上に釣り上げられるように使い、それと同時に2の指を虫様筋を使って倒します。

手の内側からこの動きを見てみましょう。

日常生活で虫様筋を使うのは、

小さな物を指先で「摘まむ」時ではなく、

コップなどを「軽く掴む」時などです。

これがこの楽曲のA部における基本的な手の使い方です。

メロディーには、実に様々なタッチを採用することが可能です。

響きの量を増やすときには打鍵前の「高さ」を上げます。

そして、音色を変えるときには

指の硬さをマリンバのマレットの「材質」を変えるようなイメージで変えてみましょう。

#8 ショパンエチュード研究 シリーズ第三回 作品10-3 (3)

に続きます。

松岡音楽教室

松岡優明

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