倍音を響かせる(1)~倍音って何だろう~
倍音の響きは、音に豊さをもたらします。
倍音とは、振動数の整倍数が共振動により「共鳴」をおこすために発生するものです。
例えば、「ド」の音が発音されれば、
ほかの整倍数の固有振動をもつ弦が、
振動し、共鳴していくのです。
「共鳴」というのは1:1、即ち同じ振動数を持つもの同時が共に鳴り合う現象です。
「人の心は共鳴しあう」なんていう詩的な表現はよく耳にしますよね。
物理的な共鳴を体験してみたい方は、
ピアノのペダルをふみながら、弦に向かって
「あっ」でも「おー」でもいいので大きな声をだしてみてください。
ピアノの弦がワンワンと共鳴します。
他の人に見られたら少し恥ずかしいかもしれませんが、
とても面白いので是非やってみてください。
このとき、ワンワンと共鳴している弦は、声に含まれた音程と同じ固有振動をもつ弦です。
(2人や3人で同時に声を出したわけではないのに、実に沢山の弦が共鳴して、雑然とした響きになるのには、自然な音である私たちの声は、それぞれのピアノ線のように決まった一つの振動数ではなく、色々な音が混ざり合っていて、非常に複雑な振動数を持っているためです。)
また、ピアノを使って倍音の響きを体験する方法もあります。
まず右のペダルを踏んで、ダンパーを解放したら、
中央のドより1オクターブ低いドの音を強く打鍵して耳を澄ませてみてください。
そのドの音の響きの中に、様々な他の音が混じり合っていることが分かるかもしれません。
よく分からない方は、
ペダルを踏んだまま、とっても静かな音で、
1オクターブ上のド
から順に上に向かって
ソ、ド、ミ、ソ、♭シ、ド・・・
と押していってみてください、
その後にもう一度最初に鳴らした
ドの音を、ペダルを変えてから鳴らしてみてください。
再び耳を澄ませると
ドの音の中に含まれている倍音が、どんどんと聞こえて来ませんか?
音の振動はHz(ヘルツ)という単位で計られます。
たとえば、ピアノの中央の「ラ」は
440Hzという振動数を持っています。
それに対して、その1オクターブ上の「ラ」は880Hz、オクターブ下の「ラ」は220Hz
つまり、ある音とその1オクターブ上の音の振動は1:2というきれいな正数比になります。
(同様に4:3、2:3、5:4などといった正数比で計られる音同士も、互いによく響き合い、私たちは心地の良い響であると感じられます。)
こういった正数比の音同士は、互い鳴り合いやすくなるのです。
余談ですが、
よくクラシック音楽が心を落ち着かせたり、精神を浄化してくれる
なんて言われますが、
それは生活音や街の喧騒、デジタルな音など比べて、振動数そのものが簡素であり、
音の波状が美しく、
耳や体がそれを人にとって心地のよいものである、と判断するのかもしれませんね。
倍音を響かせる(2)~ピアノで豊かな音を出すためのイメージ~に続きます。
松岡優明